浮きイルカ

浮きイルカは、楽しい。
平面。海がひたすら続く平面。その平面の上に一点の濁りがある。その濁りに近づくとそれは濁りではなく影だと言う事に気づく。上を見上げればそこには球体。その大半が水。そしてそうでない部分は何かの残骸のようだ。
星と呼ばれるそれは、巨大生物のなれはて。直径は数十キロ。内部の浮遊機構のみが活動を続けている。
そこを巣として活動するイルカたち。浮きイルカだ。下面を占める海には生物はいない。それよりも何も無い。ただ広大なそれは深く熱を吸収しているだけだ。そこに資源といえるものは何もないこの世界。イルカたちは宙へと住処を移した。ヒレで宙を掻き、その軌道で円を描く。
偶然発見したのか、過去から発展させてきたのか、それは浮遊の魔法球(魔方陣の立体的なの)
であった。彼らと、数少ない浮遊樹に引きずられて空へ住処を移したものを除いて海洋種は滅びた。陸上種はその数世紀前には姿が見えなくなっていた。
人はとても軽い。イルカに引きずられるように宙を舞えるくらいに。そして、人は滅びる運命にある。ゆっくりとした静かな最後。(原因なに?)それを全ての人が知りながら日常を送っている。
二人の人。少女、ではない。16、7歳?クールな悲しみを感じている目。ただ、奇妙なのは彼女らが一つの体を持っていることか。通常は大人しい奴が表に出ている。そして、揉め事などには、もう一人の荒っぽい性格のやつが出てくる。体がぐにゃリと歪み、手がブレる。そして、そこからもう一人の彼女が分裂するかのように現れる。
大人しいほうが白、荒っぽい方が黒の基調の服を着ている。精神分裂種。
イルカと一緒に旅をしている。イルカは嫌なやつだが、荒っぽい方の奴に恐れをなして言うことを聞いている。
ここから語られる、彼女たちの旅のお話。