啓示空間 感想

文庫なのに、人が殴って殺せそうなボリュームのSF小説、啓示空間を読み終えた。
正統な宇宙SFであり、光速を越える手段が基本的に存在しない点や、異星種族が重要な点でのみ現れる点など、なかなか私好みである。
本書の第一印象は、エンディミオンを思わせる独特の造語の多さだ。これは力量がない作家がやると、一気に作品の質が落ちてしまう手なので純粋に賞賛に値する点だと思う。また、常に二人か三人の視点が短い間隔で入れ替わりながら物語が進んでいくという点も、独特といえば独特な点だろう。これに関しては、物語の序盤では逆に状況を把握する足かせとなって、テンポを悪くしていたが、中盤から終盤にかけて、登場人物や舞台設定が把握できた後では、読者を引き込む巧い手として働いていた。まあ、個人的にはここまで頻繁に視点を入れ替えると
「またか」という感覚を受けてしまったが、そこは個人の好みが分かれる点だろう。
また、解説にも書かれていたが、物語の終わり方が全ての伏線が回収された後で終わるというものではないというのも、特徴的だ。一応のところは、物語的に区切りがついているのだが、まだまだ延々と続きそうな雰囲気で終わるのだ。1000ページ以上にわたって書き綴ってあるのに、さらに続きそうなのである。それが味なのかもしれないが、個人的にはやはり1つのエンターテイメントは1つで完結すべきだと思うので、そこはすこしマイナス点かもしれない。
それは別としても、壮大なスケールの背景世界や、中盤以降の引き込まれる展開はそれなりに読んでみる価値ありなので、1000ページのうち、理解し辛い300ページ程度を突破できると思えるSF好きは、読んでみる価値ありである。