乙一「ZOO」 感想

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087745341/503-8501506-3534346
この本は、切なさの達人「乙一」が放つ、短編集である。
が、今回の乙一氏は切なさの達人的側面ではなく、暗黒童話で見せた高い執筆力で描くドロドロした心理世界や、単純にパワーのあるSF的な作品、それにトリック構成だけで完結しても十分な面白さのある作品など、それ以外の面に焦点を当てて書いているようである。
まあ、それは氏が切ない物語を書く心理状態ではなかったというのも有るのかもしれない。
なぜそう思うかというと、収録されている作品の1、2本が素人が書いたんじゃないかというようなクオリティだからである。実験的作品にしてもこれはおかしい出来で、これら単体で投稿されてきたら編集部も原稿を机から蹴り落とすだろうというほどのものだ。
まあ、それらは置いておくとして、乙一の独特のテイストを用いて広いジャンルを描いているのが、この「ZOO」である。ちなみに切なさを期待しているなら
「しあわせはこねこのかたち」か「やさしさの周波数」でも読んだ方がいい。
本書では切なさ成分は低めです。
表題作のZOOレベルのもので全部揃えてくれれば、最高の出来だと思うのだが所々にレベルがガクンと落ちたものが配置されているのは、本当になぜなんだろうと思う。