リチャード・ドーキンス「ブラインド・ウォッチメイカー 盲目の時計職人」 感想

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152085576/249-9488976-1731513
進化論に関する学術書
進化というのは、少しでも良い(生き残れる)方向に変化したものが生き残るというプロセスの累積であるということの説明がしてある。基本的な方針は知っているものだったが、それによって信じられないほど複雑な仕組みが出来上がると言う例で語られていた、蝙蝠の反響システム解説など、現在でもあまり広くは知られていない事例があったりして、なかなか読み応えがあった。
ただし、このブラインドウォッチメイカーでは「進化が複雑な仕組みを発達させる理由」は説明しきれていない(現在はまだ、誰にもそれは説明できない)。
細菌以上に複雑化しても、自己増殖の面で別に有利になるわけでもない(細菌レベルの生命の方が、目にみえる「動物」よりよほど繁殖に成功している)のに、なぜ生物はこんなにも複雑化しているのか。
コンピュータシミュレーションにおける人工生命でも、地球のような複雑な生命は現れない=いわゆるカンブリア紀の爆発を起こせないため、それが起こる条件要素は大きな謎とされている。
(誤解してほしくないが、「だからデザイナーは居る」とか言うつもりは毛頭無い。基本的には累積淘汰が関わっているのは明らかである。)
あと、バイオモルフ(類似のものがvectorでダウンロード可能)という、コンピュータシミュレーションがすこし過剰なまでに出てきているのが気になる。
ちなみに、ドーキンスは「利己的な遺伝子」の作者でもある。