野村美月「"文学少女"と死にたがりの道化」

なんだこれ……すごい面白い。気づいたら100ページほど読んでいた。
勢いとかそう言うものではない、純粋な読者を引きずり込む力によって、読むことに夢中にさせる文章がつらつらと綴ってあるコレはまるでよく組み立てられた奇術の舞台の様。
はっきり言って表紙に釣られて買ったのだが、これは大当たりかもしれない。


読了。
乙一のようなエッセンスを感じさせる人間の弱さ。それを彩る、静かで、それでいて奥に強い何かを持っていることを感じさせる登場人物。そして、純粋に自分に「合っている」文章。まるで吸い込まれるように文章が目から頭の中へ流れ込んでいく、この感覚は、めったに味わえない素敵なものだった。
主人公とヒロインの二人が、文芸部で送るとても日常な日常と、それを揺らす事件と、ちょっと少年少女してる一面とが、うまくまじり合った感覚が特徴的。気の置ける二人というのは、それを見ているだけで幸せになれるのです。


あとがきを読むと、シリーズ物になる予定らしいので続編も是非買わねばなるまい。


あんまり、自分の感覚ばっか書いていてもしかたないので、ちょいと簡単な説明を。
ヒロインは"文学少女"。文芸部で主人公の先輩だ。文章を書かれた紙を食べちゃう「妖怪」らしい。でも、普通に学生として学校に通っているので戸籍とかそのあたりどうなっているんだろう。
主人公は「文学少女」。……として数年前に小説を書いていた元学生作家。男。


表紙の絵が、この作品のおおよその雰囲気を表現することに成功しているのでこの絵に惹かれた人ならば、是非読んでもらいたい作品である。


あー、そういうことか。どうやら自分は長い三つ編みが好きみたいだ。
この本と同時に買っていた本の表紙にも、長い三つ編みで制服な娘が居るのに、いまさらながら気づいたよ。