http://d.hatena.ne.jp/asin/4840112738
私の中で、乙一と同等レベルの筆力の持ち主として最上位にランクインしている日日日(あきら)の著作。
この物語はもともとはコメディとして書き始めたけれど、書き手の予想すら裏切って途中からシリアス展開になったため、そのまま執筆した、という作品らしい。
内容としては、「ちーちゃん」に比べて荒削りなところが目立たないかわりに、激しく感情を突き動かす感触も弱くなっているという感じだ。
しかし、それにしてもいくつかの段落を読んだだけで、他の小説とは一線を画す魅力を感じ取ることは出来る。本当に不思議なことなのだが、単語を並べていっただけで人を引き込むことが出来る文章を書ける、魔法使いのような人というのが存在するのだ。
ただ、この作品はその力に大きく頼っているというのも事実だと思う。
ストーリーラインとしては、ストーリーを作るための学校で下敷きにされてもおかしくないようなものだ。日常生活を送る主人公とヒロインが怪物に襲われ、それを助けるために謎の人物が現れる。……となっている。(それでも他と違う魅力を持つ作品になっていることが逆に凄いと言えば凄いが)
冷静に考えてみると「ちーちゃん」も、物語全体の構成でうならせるような展開ではなかった。
それは、経験によって得られていくスキルなのかもしれないので、今後に期待。
と言っても、この本が出版されたのは丸一年は前なので、その今後の作品は既に出版されているのだが。