決定論の世界の中にラプラスの悪魔は存在できるか?

ここで言う決定論の世界というのは、ラプラスの悪魔の存在を含んだ世界であり、ラプラスの悪魔も世界の過去状態から決定論的に行動するものとする。
(もし、ラプラスの悪魔が非決定論的に行動することで未来が変わるならそれは「決定論決定論に縛られない特殊な存在」世界論であり、決定論の世界だとは言えなくなる)



ここで、ラプラスの悪魔がいまこの瞬間に「10秒後に自分はどのような未来を予見するのか」ということを予見したと考えてみる。
それを求めるには、9秒後の世界の状態から10秒後の世界の状態を計算すればよい。
9秒後の世界状態を求めるには8秒後の世界状態から、8秒後は7秒後から計算すればよい。
……それを繰り返していくと、1秒後の世界状態はいまこの瞬間の世界状態から計算すればよいことになる。
さて無限の観測能力を持つラプラスの悪魔は当然この瞬間の世界状態を知っているので、めでたく10秒後の未来を予見できることが分かった……と考えるのは早計である。

なぜならば、いまこの瞬間の世界状態には「10秒後に自分はどのような未来を予見するのか」の予見結果が含まれているからだ。
これはつまり。
「『10秒後に自分はどのような未来を予見するのか』を求めるためには『10秒後に自分はどのような未来を予見するのか』の情報が必要だ」
ということである。この命題は無限後退に陥っている。

よって、決定論の世界の中にラプラスの悪魔は存在することができない。