安部公房「箱男」

読了。
段ボール箱に入って街頭で生活する「箱男」を主題としつつも、何が現実か分からない多層的な物語構造を織りなす実験的な作品。突如物語と関係なさそうな謎の写真とそれに添えられた詩が挿入されていたり、単独で成立するような掌編がいきなり出てきたりと、作品の輪郭がつかめない。
正直なところ後半は何がなんだか分からないが、それでも魅力ある作品になっているのはドグラ・マグラに似ている。
箱の作り方など細部までの描写が丁寧であることでリアリティを持って描かれる箱男という存在自体にパワーがある。社会からの無関心の恐ろしさと、それを受け入れることで得られる無敵さ、特定の人物であることを辞めて街の背景に溶け込むことで他人を一方的に観察する側に回るという愉悦など、暗い魅力が箱男にはある。



短編の赤い眉や洪水なども読んでみたが「不条理SF」的なものを感じた。

メタルギアでスネークが段ボール箱を被って隠密行動をする元ネタはこれらしい。