THE BUTTERFLY EFFECT - バタフライ・エフェクト

http://www.butterflyeffect.jp/
自分の中での大ヒット。去年の5月頃に映画のレビューサイトで偶然見つけてそれによるストーリー説明が、実に自分好みだったのでこれはレンタルが出たら借りねば、と思っていたが、大当たりだった。
メメントの構成を練り直しストーリの組み立て方を数段巧く見せるとこういった形になるのではないかと思われる。
この作品の概要は、幼少期にふと気が付くと記憶が数分から数時間ほど消えているという体験を何度も体験している主人公が、大学のカレッジでその空白へ意識だけ時間移動し、過去を変えることで現在を変えてしまうということが出来ると気づくというもの。主人公は、その能力で人生の中の「あのとき、こうなっていれば」という個所を変更してゆくが、変更した小さな出来事はその後の出来事に波及してゆき「現在」は、自分が望むものとは違ったいびつなものになってしまう。(これが題名の意図だ)
パズルのように埋まっていく、記憶の空白の謎。そして、それを「オリジナル」と違う形で埋めたことで変わっていく現在。
そして、それらを全て埋め合わせるためのラストシーンへと続く……。
日本語版キャッチコピーの

何度も過去へ戻り、何度でも運命を書き換える。
そしてたどり着いた最後の手段。

というのは、上手く一言でこの映画の特徴を捉えている。
作品アイディアとストーリー展開も素晴らしいが、この作品のキモはそれらを分かりやすく見せる事に成功した、という点にある。記憶を扱い、過去と未来のシーンが交錯する上、平行宇宙のような複数の現在を次々に体験するという展開にもかかわらず、見ていくだけですんなりと理解できる構成には脱帽ものである。
この成功には、平行宇宙のように変化する「現在」が一見するとダイナミックに変わっているようでありながら、その移り変わりが視聴者の理解できる範囲内であることや登場する人物は(立場は変わっていながら)同じということに起因するのではないかと思われる。それでいて、さまざまな立場からの状況を描くことで常に新鮮な驚きを見せることに成功している。
苦労してストーリー展開を追わなくても、自然に楽しめる作品なので、良作として万人にお勧めできる内容だ。
あとはネタバレ、裏話。
この映画のキャッチコピーともなっている、

映画史上、最も切ないハッピーエンド

というのが、見終わると納得である。
彼女に出会わないことこそが「正解」だったというのは、本当に切ない。



別エンディングで、ストーカー編、ハッピーエンド編なんかがあるが……いや、本当に監督さんは、あえて彼女とすれ違っていったん振り向くもののそのまま別の道を進みつづけるという選択肢をとってくれた。
変えられた運命とはいえ、それをしっかりと歩むという感触はこの別エンディング2つでは感じることはできないよ。

主人公の子供の頃の友人(最初の頃の「現在」では狂人、後に親友)のレイニー役の俳優の裏話で、

さまざまなレイニーを表現するために3週間のうちに9キロを増減させて
撮影クルーを驚かせた

って、あんた凄えよ。