うえお久光「悪魔のミカタ5 グレイテストオリオン」

悪魔のミカタは、決して美しい調和に満ちた話なんかではない。そして、だからこそリアルである。
一般的に1つのお話の中で「変わっていく」人間というのは成長するという――一般的な意味で良い方向に変わっていく――方向でしか変化しない。しかし、それは本当の人間ではありえない方向性である。確かに、人は様々な事柄を体験して変わる。でも、それによって起こる性格の変化は必ずしも「成長」と言えるものとは限らない。時にはそれが悪い方向に働くこともあるだろう。もちろん、普通の物語でもそういった変化はある。だが、それはあくまでもその後の回復を描くために一旦バッドは状態に引きずり落とすという意味での変化に過ぎない。(ついでに言うならそれはスカラー量的な変化であって、真に変化とは言いがたい)
悪魔のミカタでは、ここで「成長」ではなく「変化」していくというところが大きな特徴だろう。
考えてみれば第一巻からして主人公は物語中に大きな変化をした。そして、それが決して一般的な意味での成長ではないとい。そういう意味で、既にそのあたりからこの特徴はある程度匂っていたのだが、5巻ではそれが顕著に感じられる。