大西科学「晴れた空にくじら 浮鯨乗りと少女」

http://www.amazon.co.jp/dp/4797349166
読了。
読む前は、新たな小説のネタとして数ある物語系の雑文の中からなぜ「浮鯨」が選ばれたのかと疑問に思っていたが、読んで納得である。(作者である大西科学は、実は雑文サイトの名前だ。http://www.onisci.com/)
確かに、この浮船の独特の航行術は雑文のスペースでは満足に語りきれるものではない。一定量の浮力を発生させる浮珠を利用して高度を調整しつつ空を航行する浮船は、現実世界とは異なった、しかし都合のよい空想の産物ではなく確固とした法則の上で動いている、実にSF的な乗り物である。(ワープ航法する宇宙船よりよほどSF的だ)
しかもそれは未来未来したブラックボックスにならずに、むしろ身近さを感じさせる。その仕掛けに感嘆の叫びを上げてしまうようなセンス・オブ・ワンダーではないけれど、実に大西科学らしい良い作品だ。


あと、浮船の航行計算のために調整された計算尺であるところの「鯨尺」。欲しいです。
アニメ化したらきっと関連グッズで商品化されるはず!とか、ニコニコ動画に「鯨尺を作ってみた」動画が上がるはず!とか思ってみる。


あとがきを見てビックリ。
1巻で完結している内容なのでこれは単発的な作品かと思ったら、どうやらこれはシリーズの第一作目らしい。


ごめん。絵師さんには悪いが、この挿絵は間違ってると思うよ。キュートすぎ、萌え絵すぎ。
全体的に文章から想像されるキャラクターが絵のキャラクターに結びつかないっす。
あ、でも雲海は素晴らしく綺麗だったっす。