高木敦史「“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕」

読了。
角川で無料全文公開されていたライトノベル。企画は面白いと思ったが、正直な話この試みはちょっと失敗だったんじゃないかと思う。どうもこの無料公開版、タイトル以外は全く装飾が無いことがボディーブローのように地味に作品の印象を下げる効果を発揮しているのではないかと感じる。
テキストデータさえあれば電子書籍として十分じゃん派だった私には悔しいことだが、実際にそれを読んでみると本というのは、扉絵、目次のレイアウト、そして装飾された章タイトル等々をパッケージされてこそ正統な評価を下されるべきものになるのだということが納得できてしまった。
……単に配布画像が解像度不足だったのでストレスが溜まっただけ、という可能性もあるが。



作品そのものの感想としては、回りくどい作品という印象を受けた。
設定はとてもいい。意識はあるが体はまったく動かせず周囲の人に意思を伝えることすらできない安楽椅子探偵役と彼と、彼に与える情報をコントロールすることでその思考を自分の方に向かせようとする彼女、という発想は書いてみると凄く面白そうである。が、なんだが回りくどく外堀を埋めすぎた挙句どんでん返しが地味になってしまったという感想を抱いた。