山本弘「MM9」

読了。最近ドラマ化していたやつ。
怪獣が自然災害として存在する世界で、怪獣の発生を観測・対策を練る「気象庁特異生物部対策課」の活躍を描く作品。
群体怪獣、「人間」の怪獣など、変化球の部類に当たるネタが惜しげもなく投入され、物語は怪獣が出現したという一報が届くところから開始するため、全編に渡って切迫した現場を舞台にした怒涛の展開をする作品となっている。本作品は短編集の形を取っているのだが、それぞれ全ての作品が起承転結の一番美味しいところのみを切り出したような圧縮された面白さに満ちている。
「と学会」会長である作者らしく、怪獣はそもそも「この世界の物理法則に従わない」という特性を持つ。これは怪獣というありえない存在を存在させる納得いく解決方法でありながら、ではどうして怪獣はそのような特異な性質を持つのかという謎を演出してる。そしてその謎は最終章で解き明かされ、世界そのものの仕組みから意外な結末が導き出されるのだが……、そこはネタバレになるのでここでは説明を割愛させてもらう。
繰り返し描写される人間の都合と怪獣の都合の齟齬も、作品上大きな意味を持っている。人間と怪獣が衝突した場合、たとえ怪獣の方が理屈的に正しくても彼らは人間側の都合を優先して怪獣を抹殺をしなければならない。なにしろ、怪獣は歩くだけで建造物を破壊し、存在するだけで経済活動をストップさせ、莫大な被害をもたらすのだ。気象庁特異生物部対策課の先輩が作中で「自然は敵だ」と語るが、この言葉が作品のテーマの一つであろう。
設定だけ聞くとネタ作品のように見えるが、真面目に面白い作品!



児童ポルノやマスコミの取材のあり方についての皮肉が効いたネタは、作者の味ってことで。