H・P・ラヴクラフト「狂気の山脈にて」

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読了。ラブクラフト後期の長編作品。
以下ネタバレ。
前半は南極奥地に発見された黒い山脈(狂気山脈)を中心に不可解な海難事故や山岳遭難の雰囲気を漂わせ、後半は後半は遺跡の暗闇の中に一歩踏み入れるとなにか恐ろしいものが居るのではないかという恐怖を描く。
狂気と恐怖と自体を描くことに焦点をあてており、恐怖の対象を直接的に描くことはしないスタイルが貫かれている。本作で最大の狂気を孕んだ存在も、作中に登場する古のものどもやショゴスではなく彼らすら忌み恐れていた西方の紫の山脈のなにかという形で提示される。「それ」を見てしまったダンフォースは狂気の中でヨグ=ソトホート(ヨグ=ソトース)と口走っている。



つーてもダンフォースはネクロノミコンを読破するという、SAN値直葬待った無しな行動をしている奴なので彼の言葉がどこまで信じられる話なのか微妙。

反面、恐怖を描く以外の部分では古のものの壁画という形でラブクラフト神話体系の世界設定を明かす面もあって面白い。
古きものは、地球への入植、(人間の祖先も含んだ)生物の創造、クトゥルフの落とし子の侵略との戦い(ルルイエ沈没)、ショゴスの反乱との戦い(鎮圧後もショゴスは使い続けられる)、ミ=ゴの侵略との戦い(南極への撤退)、氷河期による衰退、という経緯をたどっているらしい。また本作では言及が無く、「時間からの影」で少し話に出てくるらしいがイースの大いなる種族とも存在時期が被っていて小競り合いがあったとか。