広瀬正「ツィス」

読了。
小松左京日本沈没首都消失に近い、IFを1つだけ入れることによって日常を日常から切り離す社会シミュレート小説。
原因不明のドのシャープの音(ツィス音)が最初は耳鳴り程度に鳴り響き、数ヶ月というスパンで生活できないレベルまで大きくなるという現象によって首都圏が機能停止するという舞台設定。
以下ネタバレ。
ツィス音の正体は誘導された集団幻聴だという説明がされるエンディングは、物語に広がりをもたせるためのフェイクじゃないかと思う。作中で語られていたように「特定の周波数の音を感知する装置」は簡単に作成できるであろうし、あれだけの大規模な現象に対して日比野以外の学者がそれを試みていないはずはないからだ。
もっと単純に、LV4以上になったツィス音を録音するには(1970年代でも)ラジカセがあれば十分なわけでそれで「録音が残ってない」なんてことはありえない。
結局は、ツィス音は実在したけど精神安定のためにあえて幻聴だという説明をしたというが正解というところだろう。