森薫「乙嫁語り」

4巻まで読了。
「エマ」の筆者の新作。イギリスのメイドが主題だった「エマ」から一転、19世紀後半の中央アジア遊牧民と定住民の生活を描く、一級品の民俗漫画。
これだけ方向性の違うものを前作に負けない細かなディテール、高いクオリティで描き切っているのは素晴らしい。その根底に流れるのは民族学的な情熱なのだろうが、その強い情熱が読者を楽しませる方向に上手く宿った作品を書く人だ。
主人公の嫁入りしてきた家の家族たちはそれぞれ魅力的な個性を持っているし、嫁入りを取りやめさせようという実家の暗躍が不安な影を落としている状況設定も引き込まれる。さらには妥協を許さない描き込みと、全方向に隙がない。