紅玉 いづき 「ミミズクと夜の王」

黒と群青と赤を基調とした油絵で描かれた、炎のような波のような映像が脳裏に浮かぶ。
デビュー作ということで祖筋は荒削りでありがちなのだが、文章そのものに他人には無い独特の力を感じさせる。素人から見てもそれがはっきりと読み取れる、まさに「デビュー作」といった感じの作品だ。
電撃小説大賞<大賞>受賞作だけあって、物語へ読者を引き込む力は十分あって当然。その上に、ライトノベルと言うようりは大人向けの童話に分類したいという特徴をもった作品。そう考えるとあらすじが真っ直ぐであることも、評価すべき特徴となる。
ライトノベルとしては異色だが小説という枠組みで見た場合、間違いなく高いレベルで評価されるべき作品だと言える。


表紙もラノベラノベしたミミズク(主人公の少女)の萌え絵ではなく「夜の王」が描く絵で飾り、一冊全体の雰囲気を御伽噺を語る調子に纏め上げた編集部の判断も素晴らしい。