小川一水「天涯の砦」

久しぶりに、素晴らしい、本当に素晴らしい作品を読みました。
作品としての完成度が非常に高い。作品を構成する部品とも言える各エピソードの質もさることながら、それらを纏め上げる物語の流れともいうべきものが非常に高レベルなのだ。
ただしこの作品は、狭義のSFとは言えないのではないかとも思った。細かいガジェットや
「真空」という主人公たちが対峙する環境の質はSF的だが、あくまでも話の骨格は
通常の災害ものであるからだ。逆に言って、それは一般に受け入れやすいという意味でもある。
なんにしても、素晴らしい作品。
是非、映画化して欲しい作品だ。(その場合、さすがにエピソードを削る必要があるので上手くやらないと駄作になってしまいそうだが。6〜12話くらいの構成でドラマとして作るとうまいこと収まりそう)


とあるサイトで「ポセイドン・アドベンチャー」と似ているとの指摘があった。なるほど、その通りだと思った。


これ、図書館で借りてきたのだが同時に借りた「アース・ガード」から見ると作家としての進化具合がえらくよく見える。別にライトノベルとハードカバーのどっちが上とかは無いと思っている(個々の作品にそれぞれレベルがあるだけだ)が、小川一水氏はライトノベルからハードカバーへと移って、成功してると思う。
「グレイ・チェンバー」とか、河出賢紀名のペンネームで書いてた時代のものと比べると
なんかもう黒歴史ですか?ってほどの差だ。でも、最近の作者紹介でもデビュー作として
「まずは一報ポプラパレスより」があるので、小川一水氏としては別に気にしていないのだろうか。