Mike Hearnのビットコインお別れブログを邦訳してみる。

http://www.boiled-pasta.guru/entry/2016/01/17/Mike_Hearn%E3%81%AE%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%8A%E5%88%A5%E3%82%8C%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%82%92%E9%82%A6%E8%A8%B3%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%82%8B%E3%80%82
要するに、
・取引の数が増加しているためより多くの取引を1ブロックに含めるようにしなければ、(高額の手数料を設定しない場合は)取引をさばけなくなる。
・しかし、ブロックサイズが増加してほしくないと考えるノードが多くの計算力を握っているため、それを行うことができない。
……という問題。
「ブロックサイズが増加してほしくないと考えるノード」とは、つまり中国の奥地にある計算センターのこと。中国にはグレートファイアウォールがあり他国との通信速度が大きく制限されるため、1ブロックサイズが増えるとそれによって増加する通信時間の分ほど採掘が不利になる。だから中国マイナーはブロックサイズが増加してほしくないと考えている。
計算力の多くを握っているマイナーの意向に沿わないブロック仕様の変更をすると、彼らはそれに反抗して古い仕様のブロックを作成し続ける。すると新しい仕様のブロックチェーンと、古い仕様のブロックチェーンの2種類にチェーンが分岐してしまう。2種類の不整合ある取引履歴が存在すればビットコインの価値記録が崩壊するため、計算力の多くを握っているマイナーの意向に沿わない変更はできない。
そういうわけでブロックサイズの増加の仕様変更は行えない。しかし前述のとおり取引数は増えているためブロックサイズの増加を行わない限り、そのうちビットコインの価値は崩壊する。



ただし実際にコアクライアントの開発側が仕様を変更した場合、中国マイナーが古いチェーンに固執し続けるかというとそれは疑問である。なぜならばハードフォークが発生した場合、新仕様側を完全に潰してしまわない限り最終的にそちらが「正しい」フォークになる可能性が高く、そうなった場合は旧仕様フォークに投入した計算力は1円の価値もないということになってしまうからである。
これにより中国マイナーたちには、囚人のジレンマに近い状況が発生する。
中国マイナーの全員が協調して旧仕様フォークを伸ばし続ければ、新仕様フォークを潰せば中国マイナー全員が得をする。
中国マイナーの一部が裏切って新仕様フォークに移ることで最終的に新仕様フォークが勝てば、その一部のマイナーは(他のマイナーが居ない分)より多くの採掘ができる。それ以外のマイナーは計算力が無駄になり大きな損失を被る。
中国マイナー全員が裏切って新仕様フォークに移ると、グレートファイアウォールの影響で通信速度的に不利な中国マイナー全員が損失を被る。
いまは中国マイナーの全員が協調してブロックサイズ増加に抵抗している状況だろうが、ブロックサイズ増加に応じないでいるとビットコイン全体の価値が落ちて損になるというポイントがどこかにあるのは確かなので、どこまで裏切りを選ばずに行くかというチキンレースになるのでないだろうか。