自分なりにトロッコ問題を解体してみた。
TL;DR
トロッコ問題は、「多くの人が死なないようにするべき」という考えと、「人の生死に関わる決定をするべきでない」という考えの、どちらに重きを置くかを問うている。
説明
トロッコ問題を単純化してバリエーションを増やしてみる。
A=5人が死ぬボタン、B=1人が死ぬボタンがある。ボタンを押せば片方のみがONの状態になる、初期状態は片方がONとは限らない。
……という場合について考えると以下のようになる。
設問 人間の答え 多くの人の死を避けることだけを考えた答え ------------------------------------------- ------------------------------- -------------------------------------------- ABボタンがON のとき、ABのどちらを押す? 未決定: 10%, A: 0%, B:90% 未決定: 0%, A: 0%, B:100% A ボタンがON のとき、ABのどちらを押す? 未決定: 50%, - B:50% 未決定: 0%, - B:100% BボタンがON のとき、ABのどちらを押す? 未決定:100%, A: 0%, - 未決定:100%, A: 0%, - ABボタンがOFFのとき、ABのどちらを押す? 未決定:100%, A: 0%, B: 0% 未決定:100%, A: 0%, B: 0%
さらにAとBで死ぬ人の数を一致させると、人間は「人の生死に関わる決定をしたくない」という行動指針を持っていることが浮き彫りになる。
A=1人が死ぬボタン、B=1人が死ぬボタンがある。ボタンを押せば片方のみがONの状態になるが、初期状態は片方がONとは限らない場合。
設問 人間の答え 多くの人の死を避けることだけを考えた答え ------------------------------------------- ------------------------------- -------------------------------------------- ABボタンがON のとき、ABのどちらを押す? 未決定: 10%, A:45%, B:45% 未決定: 0%, A:50%, B:50% A ボタンがON のとき、ABのどちらを押す? 未決定: 90%, - B:10% 未決定: 50%, - B:50% BボタンがON のとき、ABのどちらを押す? 未決定: 90%, A:10%, - 未決定: 50%, A:50%, - ABボタンがOFFのとき、ABのどちらを押す? 未決定:100%, A: 0%, B:0% 未決定:100%, A: 0%, B:0%
ということでトロッコ問題は、「多くの人が死なないようにするべき」という考えと、「人の生死に関わる決定をするべきでない」という考えの、どちらに重きを置くかを問うている。
後者の考えは行動指針として人の生死に匹敵するほど大きな重さを持っているにも関わらず、それが大きな重さを持つことが広く認知されていない。
またその行動指針が正しいか間違っているかについて共通した見解がない。
ではなぜ、人間は共通的にそんな行動指針を持っているのか?
トロッコ問題は人種や文化を超えて通用するので、これはもう本能として遺伝子にハードコーディングされているとしか考えられない。
ということは人の生死に関わる決定をしない方が生き残りやすいという、進化的な圧力があったということだ。
これは人が何かを遠隔操作できる装置を発明する前は、人の生死に関わる決定をする=自分の生死も掛けることになるという事に由来するのではないだろうか。
つまり人の生死に関わることで自分の生死も掛けることがマズイだけで、そうでない場合は他者の生死に関わる決定を避けるべき理由はないわけだが、この性質が遺伝子にハードコーディングされている以上、人はその価値観から逃れられない。
まとめるとトロッコ問題の「正しい回答」を決めることは、前述の人間の性質を受け入れた上で「人の生死に関わる決定をするべきでない」という行動指針に、どのような重さを付けるのが正しいかを定義することと同義だと言える。
ちなみにデブを突き落としてトロッコを止める派生問題については、人が人を傷つけることの忌避感を混ぜて問題を無駄に複雑にしているだけだと思うので考える必要はないと思う。
考えるにしても考慮する行動指針の種類を増やした問題だということを意識した上で考えるべき。