清涼院流水 世紀末探偵神話「コズミック」・前編

読了。
 この本を人に勧める上で最初に言わなければならないことがある。
 分厚い。
 最初、手に取ったときには聖書かと思ったよ。ほんと。・・・というくらい厚い。読む人はそれなりの覚悟が必要だ。しかし、この本はその覚悟を裏切らない。編集部がこのバカ厚い本を許可するだけのことはある、という素晴らしい内容だ。
 まだ前半しか読んでいないが、それだけでも作者の才能と緻密な構成にはため息がでるほどだ。前半の内容は、その章ごとに人物が出てきて、その中の一人が殺される。それだけである。
 一見すると単調になってしまう内容を読者に予想させない形で裏切りながらも原型はそのままに進む物語。一章ずつをみても、それだけで一冊の小説に出来そうなほど、魅力的なキャラクターが惜しげもなく登場してゆき、殺されてゆく豪華さ。そして、謎。
 悪い事は言わない。読め。
世紀末探偵神話「コズミック」・後編 前編とはうって変わって、JDCという探偵組織の固定キャラが大活躍する後半。キャラクタが固定されたことによって安定感が増し、さらにキャラクタに対する個性的な設定が光る。JDCが存在する虚構世界独特のノリも好感が持てる。
 しかし、謎ときの部分で一気に盛り下がり。作者は万能型の小説家だと思ってたのに……。思ってたのに違った。確かに読めば納得するしかない仕掛けなのだが、あの謎ときは「反則」だ。
 それがビシリッと決まっていれば10点満点の出来だっただけにここは非常に惜しまれる点だ。