瀬名秀明「デカルトの密室」 感想

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410477801X/503-8501506-3534346
パラサイト・イヴ」の著者である瀬名秀明氏による人工知能とロボットを絡めたSF小説
それがデカルトの密室である。
読み始めて、まず受けた感想が
「以前ボクと彼女は豪華客船で乗客の命をかけたチェス勝負をしたことがある……
って、お前ら何処の名探偵シリーズだ!」
というところだ。 まあ、それは本当に以前に中編小説でそういう作品を書いていたらしいので、別にいいのだが。
それは別として、このデカルトの密室。焦点は哲学者デカルトが生涯をかけて追いかけた自分とは何かということにある。「我思う、故に我有り」という言葉には、
「我」を頭の中に仮定するならば、その「我」の頭の中にはなにがあるのかという
フラクタルな謎が残る。
そういった哲学的思考と、AIたるケンイチのAIであるが故の『「我」というのは本当に有るのか、それはプログラムの結果の演算に過ぎないんじゃないか』という考えが入り混じり、物語は進行してゆく。
基本的に原題の舞台設定的に、非常に非日常的なセッティングが多く登場し、少々現実と乖離しすぎている感も無いとは言えないが、それでも読者を引き込むという意味では成功している作品といえよう。