グレッグ・イーガン「ひとりっ子」

読了。

行動原理

人の脳配線を変更できる「インプラント」を題材にした作品。
技術が思想に影響する世界の話という意味で「しあわせの理由」収録の「適切な愛」に似ている。

真心

行動原理と同じく「インプラント」を題材にする作品。

ルミナス

数学的整合性という論理空間に、不整合を持ついくつものグループが存在しておりそれらの領域がせめぎあっているという目が眩むようなアイディアの小説。
さらにコンピュータの制御された計算というか意味配置によって数学的整合性の領域を書き換えることや、それに対抗する我々とは別の数学整合性を基盤とした知性の存在する等、さらにアイディアを上積みしてくる。
順列都市を読んだときのような心地よい戸惑いを感じる読後感である。

決断者

自由意志の「泉源」は何かという問題。

ふたりの距離

他我の存在を確認するために、他者になる。
世界設定は「ぼくになることを」と同一。

ラク

チューリングマシンの停止性問題。

ひとりっ子

表題作。
量子力学のエヴェレットの多世界解釈に基づく、現実とそれに伴う意識の分岐と、脳の動作にその分岐を起こさせない(コンピュータ上で再現された脳を持つ)人間を自分たちの娘として作ろうという話。