小林泰三「奇憶」

読了。
ホラー作家にして多次元、別世界を描くのに長けたSF作家でもある小林泰三によるホラー小説。
この作品はホラー成分がとても強くSF色はないが、存分に小林泰三らしさが出ている不気味なテイストの作品だった。今の自分は本当の自分ではないという主人公の思いをベースにして、自分が住んでいる世界の隣にある不気味な世界を存分に描けていたと思う。
散文的な展開と次々に展開する世界図は、同作者の「玩具修理者」に収録されている
「酔歩する男」に近いと言えるだろうか。


要所要所でクトゥルーな単語が出て来たりしたが、まあそれは作者のお遊びということで。