更伊 俊介「犬とハサミは使いよう」

読了。積み本(本の十戒的にアウト)していたが、読了した。
本を読むことを愛して愛して愛している主人公が殺人事件に巻き込まれ、殺害された後に犬として転生するお話。そして本を書くことを愛して愛して愛している作家の家に転がり込むことになる。
……とプロットだけ見ると特筆すべきものではないのだが、ネタ・キャラ・筆力と良いものを持っている作品だった。しかもこれ、デビュー作なのである。
大きく分けたジャンル的には推理ものということになるのであろうが、読んだ感じは推理というよりもキャラクター同士の掛け合いを楽しむ作品といった面が強い。また、各所に漫画だとか1990年代初頭の懐かしネタが含まれており、それらも強いアクセントになっている。
しかし決して、個性の強いキャラクターを出してネタを散りばめておけばラノベ的には高評価でしょ、という作品ではなくやはり基本には読ませる文章があるところが評価ポイント。
ファミ通文庫よりファウスト的なレーベルに居た方が活躍できそうなタイプに見える。



マイナス点としてはプロット面が弱いところ。大問題というわけではないが、家族のことはそんな簡単に割り切れるのかとか突っ込みどころも。

ちなみにコンビで執筆している作家さんらしい。