ワンダと巨像 感想

http://www.playstation.jp/scej/title/wander/#
ICOのスタッフが送る作品ということで、前評判が高いPS2ソフト「ワンダと巨像」だが実際にプレイしていみると、確かに高いクオリティを持ってはいるものの、手放しに褒めるわけにはいかないものだった。
グラフィックについては、画面がカクカク動いているように感じられる(フレームレートが低い)こと以外は文句のつけようがない。フレームレートが低いことに関しては、この画像クオリティを出すためのトレードオフだと考えれば、許せる範囲である。
全体の展開は単調である。一体の巨像を倒すごとに「次は……」で始まる巨像の説明が始まるので繰り返し作業をさせられている気がしてくる。一体一体の巨像を倒す手順も、巨像の居る場所は光が指し示してくれるので迷うこともないし、巨像は弱いので倒しがいがない。(後述)
自由度として考えてみれば、確かにICOもこの程度の自由度しかなかった気がするが、次に行くべき場所まで矢印が出て進まされるのと、自分で進むべき道を探すのとでは大違いである。最初の2、3体だけ大体の場所をヒントとして示し、あとは自由な順番で自分で巨像を探させるようにすれば、自分で道を切り開いている感触を得られたのではないかと思う。
また、巨像との戦闘だが、これが私から見ると完全なパズルになってしまっている。0.1秒の操作ミスでダメージを受けるリスクを犯し、相手にダメージを与えるという構図が無く、謎を解けばノーリスクで相手にダメージを与えられる、という構図になっているのだ。これは、そういうゲーム性だと受け止めれば問題ないのだが、それにしても謎を解いて倒したという達成感を得ることが難しい作りになっている。
弱点は光が指し示すので、そこを攻撃すれば大体は倒せる上に、一定時間が過ぎると(聞きたくなくても)天からヒントの声が聞こえてくる。さらに、最後の巨像を除き、巨像一体一体につき、解くべき謎が2つか3つしかないため、非常に重量感のある巨大な敵が、たったのこれだけで倒れてしまうのかと思えてしまう。
アクションの難易度について、アマゾンのレビューを見るとどうやらゲーム初心者には巨像との戦いがアクションとして難しいと言われているため、ゲームに慣れた人にはアクションだと期待させて肩透かしを食らわし、ゲームに慣れていない人には素早い操作を要求して、進めなくさせてしまっているという中途半端なものになっているようだ。ただ、パズル+アクションというのはどの程度の難易度に落とすのかというのが難しいところであり、正解が無い問題でもあるのでアクション難易度についてはこれでよかったのではないかと思う。
次はストーリーだが、これが、どうも中途半端な感じを受けた。ICOの場合は、雰囲気と、テーマソングの切なさと、重要な登場人物を常に手をつないで一緒に移動させるという手法で、強引に感動的なラストという一点にまとめあげていたのだが(ほめ言葉)、ワンダと巨像の場合は、一本道で単調に感じられる→雰囲気を感じられない+テーマソングが無い+眠り続ける少女がゲーム中は背景と同じ扱いである、ということでそういった手法にも失敗している。その点は製作者も感じていたのか、声による説明がゲームの開始時に入っているのも、考えようによっては痛々しい努力と言える。
最後に、これは私の我侭な要求ではあるのだが、せっかく様々な表情を見せる壮大なフィールドが用意されているのに、移動が面倒なのでそれを見に行く気が起こらない点は、改善の余地があるのではないだろうか。フィールド上には景色を除けば無視できる程度のものしか無いので、目的の景色を見に行くためだけに移動するのが面倒に思えてしまうのだ。一周クリア後に取得できるだけでもよいから、マップの特定地点(セーブポイントなど)にジャンプする機能もあればよかったと思う。



総論として、非常に良いゲームになる資質はあるが、表現の方法を一つ間違えているゲームだと思う。
発売を遅らせることができない事情があったのかもしれないが、オープニングムービーを見てもフレームレートが低い箇所があるなど時間が足りなかったのではないかと想像させる箇所が多く、練りこみ不足を感じさせるゲームなので、あと一年ほど仕上げを行った後に発売してくれれば、ICOと同等の名作になりえたのではないかと予想できるゲームだ。