うえお久光「悪魔のミカタ - 魔法のカメラ」

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840220271/249-9488976-1731513
これは、なかなかにライトノベルと呼ぶには重い代物だ。
とは言っても、その構成は完全にライトノベルそのものだ。現代日本の学生である主人公に、コスプレ姿のような悪魔の女の子。そして、学園には個性ある仲間たち。
しかし、その設定の上でつむぎだされる物語はライトノベルというには異質なものであった。
確かに序盤の展開は、良質なライトノベルそのものである。魔法アイテムによる殺人事件と、学園の仲間達によるその解決。まあ、この段階まででもキャラクターたちの性格に異様なまでの力強さがあることは感じさせられるが、まだ普通に予測の立つ物語を構成している。しかし、物語の中盤にヒロインが死亡したことによって、この物語は大きく性質を変える。それを契機として重い過去をひきずった被害者や、多重に織り込まれた謎が少しずつ見えてきて、さらにそれらが行動の予測のつくキャラクターではなく、反応が読めない人間たちの意見のぶつかり合いの中で描かれているのだ。
そして、終盤。ヒロインの仇である「犯人」へ悪魔の女の子の無垢であるがゆえの残酷な行動と、自らの取る方法に疑問を抱きながらもそれを利用する主人公。
今後のストーリーの骨子となるであろう、死亡したヒロインを生き返らせるために、悪魔すら利用してゆく、というものが具体的に描かれている場面だと思う。
普通に組んだ場合、登場人物がハチャメチャに事件を引っ掻き回して最終的に解決させて、めでたしめでたしという構成になるはずの材料で、こんな等身大の話が描かれるとは。
予想外な形で読み応えを感じさせてくれる小説である。


気に入ったのでシリーズ集めてみようかと思う。
番外合わせて13巻ほど出ているようだ。



ちなみに、

第8回電撃ゲーム小説大賞応募当初はタイトルが
「みークルズサゼスチョン"ポリッシュアップルズ"」と言う強烈なものであった
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%AD%CB%E2%A4%CE%A5%DF%A5%AB%A5%BF
らしい。