コリン・マッギン「意識の<神秘>は解明できるか」

読了。
神秘主義(https://www21.atwiki.jp/p_mind/pages/47.html)のコリン・マッギン著作書。

1章 意識――いまだに解明されざるもの

脳は意識を生み出す。しかし脳以外の器官は意識を生み出さない。両者はどちらも物理法則に従う肉であり決定的差は無いはずだが、意識の発生有無という決定的差があることを問題として提唱する。
また、単純な唯物論や二元論ではこの問題を解決できないと主張する。

2章 自然の神秘とから寄った心

人間の知識のありかたには片寄りがあり、それは心身問題を解決するのに向いていない片寄りである。

3章 霊魂、平行宇宙

二元論的な説明。

4章 心の空間

心は空間座標上のどこにあるか示せない。(まあ、「絵」という概念も空間座標上のどこにあるか心と同様に示せないと思うんですけどね)

5章 自己にまつわる秘密

自己に関する哲学的な紹介。
3〜5章には、本書の主張にとってクリティカルな説明があったとは思えない。

6章 ロボットは憂鬱をみにつけられるか

機械は意識をもつかのように行動できるが、意識を持つかどうかはわからない。(自分以外の人間もそうだけど)
そして著者は直感で意識という特性は生物でないと持てないと思っている。

7章 哲学の耐えられない重さ

人間の生来の考え方が心身問題をの解決を阻むなら、遺伝工学で「心身問題」を解決できる生来の考え方をもつ生き物をつくれば心身問題は解決できる。
そして我々は直接それを理解できないにしても、それが大枠として正しいかどうかの判定はできる。



認知的閉鎖については、人間の思考形式がその問題を扱えないという問題について、考えられないことを示さない気がする。
人間が(人間の思考形式では扱えない)量子力学や4次元空間に形成される形(超立方体など)について、理解はできなくても価値ある議論ができるのと同様に適切な思考ツールを使えば、別に「心身問題を解決できる知性」を作らなくてもいまの人類でも価値ある議論ができるはずである。
また、全体的に気になったのは、いとも簡単に「私には心がないようにみえる」ことを「心がない」とイコールで結びすぎていること。また、その判定が正常に行われると無条件に信じすぎていること。きっとこのひとはゲームでAIと共闘もしたことがないし、SNSbotに騙されたこともないんだろう。

それとは別に思ったんだが、哲学本は本というある程度のページがまとらないと成立しないメディアに載せることで、本来もっと簡潔、明瞭に示せたはずの主張が、それだけでは原稿として成立しないという哲学とは関係ない事情によって不要に水増しされてしまってないだろうか。