清涼院流水 人類最後の事件「カーニバル・イヴ/カーニバル/カーニバル・デイ」感想

読了。
 序盤を読む限り、コズミックの序盤に似ている感じだ。荒削りという印象が薄くなり、既存のキャラも出てきてJDCもシリーズ化していると実感させるつくり。
 しかし、いきなり主人公格の登場人物がバンバン死ぬ。前作とかで大活躍していても容赦無しである。普通の推理小説なら探偵役は推理する立場にいるという絶対の安全領域に居て、殺されることはありえないのだが、JDCシリーズは、探偵団体が中心となって進む物語なので探偵役といえど安全が保障されない。
 主役級のキャラをここまであっさりと序盤に殺してしまう点はさすが清涼院だ。彼が書く小説の中には安全な人は存在しない。たとえ主人公でも、ストーリーテラーでも。その点の評価は非常に高く付けたい。
 なんだかんだ言っても、彼は荒唐無稽なアイディアを企画して実現させる能力と、それを出版社に認めさせるだけの文書表現能力がある。
彼という天才を見て私は思う。天才というのは枠に縛られないで、なおかつそれを認めさせるほどの地力のある人のことではないか、と。
 厚さについては気にしてはいけない。
 1冊が辞書くらい厚いのに、それが三冊ある。最初の一ページをめくったとき感じるのは地平線の向こうまで続く砂漠のイメージだ。千里の道も一歩から。たとえそれが原稿用紙何千枚のものだとしても、まず一ページ目をめくらなければ始まらない。