海人世界

 水中には流れがある。潮流を利用して動く乗り物を操る人たちの物語がそこにはある。
その乗り物の名は「ビーグル」という。「ビーグル」の大きさはさまざまだが、その多くは10m以上。
水の流れは大きな流れなので当然長い距離を旅する事になる。そのためには大きさが不可欠なのだ。未確認だが、遠洋漁業の陸人が端から端までがカスミにかかって見えないほどの大きさの「ビーグル」を目撃したという話もある。
陸人(リクビト)は普通、陸上に住む人々、中世程度の文化レベル。それに対して「ビーグル」に乗り、普通海で暮らす人々のことを海人(ウミビト)と呼ぶ。海人は陸と一切関わりあわなくとも暮らしてゆける民で世界中の海を海流に乗りながら漂流している。陸人と海人は互いにあまり干渉しない。この世界の海は海竜などが実際に存在する。
海人はそれを神と崇めるが、やはりそれは海に住むただの生物にすぎない。「ビーグル」は帆を海中にはって陸人の船とは比べ物にならない速度で進める。小さいものでも海中の帆はかなりの大きさがある。しかし、帆を閉じたりするのは幾何学的に設計され、張力と応力を最大限に活用することにより一瞬で行える。「ビーグル」は小さいもので一家族。大きいものだと1集落の人が乗っている。
帆と一緒にアミをかけて魚を捕まえる。水中の帆はその先にバランスウェイトがあり、決して転覆する事はない。
海をさまよっているとはいえ、海流という道にそって動いているため、最低でも一ヶ月に一回くらいは他のビーグルと出会う。
数年に一度、祭りがあり、多くの海人が集まる。時を決める時計は、このときに一族の中で統一される。海人が集まるところは、海竜の集うところでもある。海竜は20m以上にもなるウミヘビ。エラ呼吸。プランクトンを食べている。海人と陸人の間に争いは無い。
ただ一度の例外を除いて。「海陸戦争」である。陸人がつたない海洋技術で海へ進出してきたとき、海人を略奪したのだ。
しかし海人全体と戦う陸人はあっさりと巻けた(苦戦したあとで、海竜が助けてくれたとかもいいかも)。海人はその民族性ゆえか、その事に対する報復などはせず、その後も恨みは持っていないようだ。それ以来陸人の間では、海人に手を出すのはタブーとされてきた。
海人の「世界地図」は海流地図である。
 物語としては、一人の陸人の若者が成り行き上海人と共に旅をすることになり、そのカルチャーギャップにおどろくという物語でゆこう。