谷川流「涼宮ハルヒの陰謀」 感想

涼宮ハルヒシリーズ7巻。
表紙が朝比奈さんであることからも予想が付くように、今回の話は時間移動ものである。時間移動を主軸にした話は、実際の時間軸とストーリーの時間軸とが必ずしも一致せず、それゆえに高いレベルの筆力を持った作家にしか満足に扱えない、という印象を持っている。
涼宮ハルヒ・シリーズの当初は全面には出てこなかったがどうやら谷川流氏は「持ち味」の一つとして、この時間軸を入り乱れさせたストーリーを持っているようだ。もちろんそれを描き切る執筆力と共に、である。
本作では主人公は時間移動をせずに、時間移動をしてきた朝比奈みくる(大きい方ではない)を導くという内容だが、8日後からやってきたという設定もあって時間が制限された物語という形に組み立てられており、ラストにはカッチリと事柄があるべき場所に収まる快感を味あわせてくれる。
ただ、せっかく久しぶりの長編なのに、物語り全体が1日1日にイベントが存在するという構成をとっているせいで、短編の集まりのような感触になってしまったのは残念である。


そして、「敵」の出現は意外だった。ハルヒキョンの精神的成長につれて激動のストーリーから、不思議なことは起こりつつもそれを普通に受け止めるというストーリーになりつつあったものが、ここでターニングポイントを迎えたと言って良いだろう。
具体的な「敵」の動きは次巻の「憤慨」にも出てこなかったのだが、これが2年生編のメインとなるのだろうか。楽しみである。