「適正手続」についての、法律側と科学側のすれ違いについて

http://d.hatena.ne.jp/ysmatsud/20120802
科学者とのコミュニケーションが痛いわけ(http://law-science.org/webronza10.html)を端とした、法律側と科学側のすれ違いが起きているみたいだけれど、これは"科学"という単語をそれぞれが別の意味で使っているからではないかな、と思った。



とりあえずすれ違いについては置いておいて、それぞれの世界で手続に則った証明は必要かという問題をまとめてみると、こんな感じになるんじゃないかと思う。

法律の世界

警官が検問をしていて車を止めました。
ここでひらめいた警官は、強引にドアを開けると、覚せい剤をみつけました。
この覚せい剤を証拠として、違法性を法律的に証明できるでしょうか?
 ↓
できません。
なぜならば、違法な実力行使によってみつかったものは、証拠として適正ではないからです。

科学の世界

化学者がある手順で試薬が赤色になることを確かめるために、実験を行いました。
ここでひらめいた化学者は、本来混ぜるはずだった触媒と違う触媒を混ぜると、試薬は青色になりました。
この結果を証拠として、試薬が青になる現象を科学的に証明できるでしょうか?
 ↓
できません。
なぜならば、正しく設計されていない実験系で発生した現象は、証拠として適正ではないからです。

工学の世界

研究グループが明るく光るダイオードを作ろうと、試作品を作成しました。
ここでひらめいた研究グループは、本来使うのと違う部品を使うと、青く光るダイオードができました。
この結果を証拠として、青く光るダイオードを作れることが証明ができるでしょうか?
 ↓
できます。
なぜならば、理由はどうあれ青く光るダイオードは作れているからです。



で、科学側で"科学"についての見解が一致しない原因なんだけど、
・法律側が"科学"と呼んでいるものは、実は「工学の世界」のことである
・科学側が"科学"と呼んでいるものは、そのまま「科学の世界」のことである
……というところに原因があるんじゃないかなあ、と。
外野席からの感想だけれども、科学哲学こそが科学だという見解と、体系化された知識や体験のことが科学だという見解とが、すれ違いの原因じゃないかなあと感じられています。