悪魔のミカタ13 It/MLN 感想

It編・完。ていうか12巻の感想でも書いたんだけれども、これは本当に「悪魔のミカタ」である必要があまり無いような……。
悪魔のミカタとしての物語の進行は、堂島コウが漁夫の利的にザ・ワンという希有な存在の魂(=可能性)を刈り取ることに成功したという程度だし。2000年という中で成熟されてきたそれは、下手すればこれだけで《知恵の実》Itが完成しちゃうんじゃないかというほどの魂である。


吸血鬼ストーリーとしては、文句無く最高のものだった。最後のオチとしての「MLN」も満足行く読了感をもたらすものだったし。
それにしても、吸血鬼がまともに人間という種と戦うと負けてしまうあたり、結局のところ人間の群れという存在ほど戦略に長けた存在は居ないということなんだろう。人間の群れに勝つにはそもそも脅威として認識されないようにするか、徹底的に隠れつづけるか。いずれにしても、自らの特徴を明かしてまともにぶつかるような戦い方をするのであれば、純粋な戦力がクトゥルフくらいあっても人間の群れには勝てないだろう。
(まあ、クトゥルフは人間の知っている世界よりも上位の存在であるという意味で、現在の人間には決して勝てない相手だとは思うが。でも、イースの大いなる種族くらいの科学力があれば勝てると思う)


ところで、ザ・ワンが街に潜入し始めた当初に使っていたはずの
「吸血鬼の赤い瞳に魅入られた人間は、それに逆らうことは出来ない」
という特性はどこへ消えてしまったんだろう。
これは弱い催眠効果としてしか使えないものだったとしても、もっと有効活用すれば別の道も開けたと思うし。実のところ、この特性は人間側の希望を高笑いしつつ叩き潰すという展開が待っているから使われていないものだとばかり思っていたのだが、最初から無かったことされてしまっているようだ。