テレパスネット

 テレパス人格インプラントによる、テレパシーネットワーク。
 無意識領域で活動するその人格は、表層の複雑で繰り返しの無い思考を単純な信号に変換してテレパシーで送る。そして定型の信号に順じて、定型の変換を行う。人間のテレパシーによるネットワーク。実体は薄いが、存在は濃い。インプラントは安い。
 過去の電子を基本としたネットワークも、まだ存在価値は大きい。テレパスネットでは情報は常に変動し、固定化させることが出来ないが、電子ネットワークではそれが可能だからだ。ただ、一度人格インプラントをすれば、周囲数キロが無人とかそういう状況でも無い限りは場所と時間を選ばずに繋げるテレパスネットに、コミュニケーション機能としての存在は譲り渡した。
 テレパスネットの普及と発展に伴い、テレパス人格もオプション機能として、クライアント作業が出来るようになってくる。パソコンとは逆の順序だが、単体でなにかを実行できる機能が付いたのだ。これで テレパスネットの基本は、インターネット系の電子ネットワークなのでプロトコル系統がハッキリと決まっている。それ以外の方法でテレパスネットを傍受しても意味の無い信号が頭に響くだけだろう。それはまれに存在する、天然テレパシストでも同じ事なので彼らもまた、人格インプラントを受ける。むしろ、四六時中騒音を聞かされているようなもんなので、一般の人よりも強くそれを希望する。
 テレパスネットのなりたちは、一部の天然テレパシストがプロトコルを決定して人の手、というか人のテレパシーで原始的な人格インプラントを、テレパシストでは無い人に行ったのが始まりだとされている。ご存知のように、現在では人格インプラント専用人格を、人造脳へとインプラントしたものがある。これらは企業が研究を重ねて作り出したものだが、その企業が大きくなる過程で、最初にテレパスネットを作り出した人々の存在は中途半端に闇に葬られている。その候補は数百人クラスだが実際だれなのかは不明だ。
 ここでは、あえてテレパスネット内に存在するプログラムに詳しくは触れない。ただ、その存在はかつての電子ネットと同じように商用ベースのもの、違法だが便利なもの、悪意に溢れるもの、そして自己増殖してゆくものなどが存在する事は明記しておこう。
 ようこそ。テレパスネットへ……。