谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱・溜息・退屈・消失」

アニメ版の大きな特徴である時系列のシャッフルに関しては、どういった流れでああいった大胆な構成が出来上がったのかが小説を眺めて初めて分かった。そもそも涼宮ハルヒの憂鬱という作品の書き手自体は、(少なくとも最初は)時系列順に作品を書いていたのだ。だが掲載順の問題で本編よりも前に本編後のショートストーリーが公開されたりというところから、本編内に「未来のショートストーリーについて言及する」という手法が持ち込まれ、たまたま時間移動を扱える枠組みの作品だったので、作者側でも「消失」で積極的に時系列の入り組んだ話を組み込み始めたようだ。


そう言う枠組みを掴むことが出来たとは言え、消失までの3作品は基本的にアニメでカバーしている範囲であり、先の展開を全て知ってしまっているということで純粋には楽しめなかったと思う。見る順番によるところもあるので確実なことはいえないが、これってやはりアニメの出来がよかったという事を意味しているのだろうか。


ともあれ、主人公の独白を地の文章として利用するという独特の書き味でありながら、一般的な小説と同様かそれ以上のレベルの楽しさを提供してくれるという意味で執筆力の高さが伺える作品であった。
現在、涼宮ハルヒシリーズは短編集を交えながら10巻まで出ているそうなので、全部読んでみる価値はありそうだと感じたシリーズであった。


アニメ版では一切言及されなかった、喋る猫「シャミセン」の謎も解けた。ていうかあれは恒久的に喋ってる奴ではなかったのか。残念。