杉井 光「ばけらの」

読了。
昔あったシェアワールド妖魔夜行のラブコメもの、という感じの舞台設定の小説。(実際には妖魔夜行とは多分まったく関係ない。出してる会社違うし。でも、妖魔夜行の1シリーズとして出てもおかしくない設定ではある)
特筆すべきは、小説家が主人公でありその主人公が書いた小説こそが本作だという設定になっていること。本来は厳しい世界をお気楽な世界として描くためのメタ設定は自分にとってストライク。
以下ネタバレ。
現実世界→(現実世界を元ネタにしたキャラクタ設定)→小説内の現実レベル→(主人公の書いた小説)→本作という構造になっている。この設定で描くゆるい日常系としてだけでも十分に満足できるクオリティだというのに、作中作であるという設定を活かして「作中の現実レベル」と絡める4話の展開がすばらしい。作中作をこういう形で使うのはありだ。というか4話途中までこの展開は予想できなくて、心地よい驚きを与えてくれた。推理小説の謎解きで事実と違うことを事実っぽく誤読させるための小道具として使う作中作は夢オチ並みの反則だと思っていたのだが、物語構造として小説内の現実レベルに干渉してくる作中作として、この使い方はありだな、と趣旨替えさせられたほどである。

  • ほんとの現実レベルが元ネタになってる

http://d.hatena.ne.jp/kim-peace/20080911/p1
http://blog.meguru.moo.jp/?eid=798562
http://blog.meguru.moo.jp/?eid=760120

  • GA文庫とかあちこちに現実世界の固有名詞が入ってるとこ

「作家生活を面白おかしく描く作中作」のリアリティをあげている要素として上手く活きている。

  • 当然、続刊はあるよな?設定的に無ければ許せない。いずな消えちゃうよ。

2巻は1月14日に出てるみたい。買おう!
http://www.amazon.co.jp/dp/479735268X

  • あえて「ほんとうのあとがき」は無しにしてほしかった

限定版でもよいから、

  • 麻雀ネタに走ったのはどうかと思う

いや、私はわかるし楽しめるけど判らない人にとっては展開が理解できず、大きなマイナスポイントとなるんじゃないかなあ、と思うので。